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​■ 不動産明渡・賃料回収 

 家賃の滞納は,不動産のオーナー,管理会社,保証会社にとっては死活問題です。
 とはいえ,家賃滞納者に対して,法的手続によらず強制的に退去させてしまうと損害賠償責任や刑事責任を問われるおそれもあります。そこで、法的手続によって家賃滞納者に対し,明渡しを求めていくことが必要になります。法的手続を行っている間,家賃の滞納は続き,しかも新たな入居者も入れることもできません。このような事態は,不動産経営にとって大きな痛手となります。しかも,時間が経過すればするほど家賃滞納者との連絡が困難となり、結局は滞納家賃を回収出来ないままになってしまうリスクもあります。

 家賃滞納の兆候があらわれたはまずはご相談ください

 最初の滞納に対する催告 
 はじめての家賃・地代などの賃料滞納があった場合,いきなり不動産の明渡しを求める訴訟を提起しても,明渡しは認められないのが通常です。

むしろ,最初の滞納があった場合には,まずは賃借人(借主)に対して,電話などで支払いを求めるのが通常でしょう。

 ただし,支払期日に入金がなかった場合には,すぐに催促した方が効果があります。できれば翌日にでも入金を催促し,継続的に連絡をとっておいた方がよいでしょう。

 念のため,賃貸借契約において,賃料につき連帯保証人とも連帯保証契約をしていたという場合には,その連帯保証人に対しても連絡をとっておくとよいかもしれません。

 内容証明郵便による請求書の準備 
催告をしても支払いがなく,それが連続した場合,たとえば,月払いで滞納が2か月目(2回目)になるというような場合には,賃借人に対して正式な請求書を送付しておくべきです。

この請求書は,後に証拠とすることができるように,配達証明付きの内容証明郵便で作成するのがよいでしょう。

請求書には,滞納賃料の金額を明示して支払いを求め,かつ,支払いがない場合には不動産からの立ち退き・不動産の明渡し等の法的手続とる旨を記載しておく必要があります。

また,賃貸借契約において,賃料につき連帯保証人とも連帯保証契約をしていたという場合には,その連帯保証人に対する配達証明付き内容証明郵便も作成しておいた方がよいでしょう。

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 内容証明郵便による請求書の郵送 
実際に家賃・地代などの賃料の滞納が2か月目(2回目)になってしまった場合には,配達証明付き内容証明郵便による請求書を郵送します。

この場合,連帯保証人がいれば,その連帯保証人に対しても,連帯保証債務の履行を求める配達証明付き内容証明郵便による請求書を郵送します。

 裁判外での交渉・合意(示談)
賃料の滞納が継続した場合には,裁判外で交渉をして,支払い及び不動産からの立ち退き・明渡しを求めるのが一般的です。連帯保証人がいれば,連帯保証人とも話し合いをしておく必要があります。

交渉によって話がつき,即座に支払いまたは不動産からの立ち退きや明渡しがあれば問題はありません。もっとも,滞納分を分割払いとするなどの場合には,その滞納分の支払いについての交渉結果を証拠として残しておくために,合意書(示談書)などの書面をとっておいた方がよいでしょう。

また,賃貸不動産から立ち退いてもらうという合意をする場合も,いつ不動産を明け渡してもらえるのか,その際に不動産内にある動産等をいつまでに撤去してもらえるのかなども,合意書(示談書)などの書面でとっておく必要があります。

 

 

 契約解除の予告通知 
 滞納賃料が3か月を超えた場合には,賃借人に対して,一定期間内に滞納分の支払いがない場合には賃貸借契約を解除する旨の通知を発送しておくべきです。

 この通知もやはり,配達証明付きの内容証明郵便で送付しておくべきでしょう。

 契約解除通知 
 前記契約解除の予告通知における猶予期間を経過しても滞納賃料の支払いがない場合には,賃借人に対して,契約を解除する旨の通知を送付しておく必要があります。

 この通知もやはり,配達証明付きの内容証明郵便で送付しておくべきでししょう

 占有移転禁止の仮処分 
 前記の内容証明郵便による契約解除通知を送付した後は,不動産の明渡請求訴訟を提起する準備をしていくことになります。

 もっとも,賃貸不動産を占有・利用している相手方が賃借人でない第三者であるという場合,その第三者を相手方として不動産明渡請求をしなければなりませんが,仮に判決をとっても,その第三者がすでに不動産を占有していなければ,その判決は意味のないものとなってしまうおそれがあります。

そこで,訴訟提起に先立って,賃借人や第三者が占有を他人に移転できないようにするために,占有移転禁止の仮処分を申し立てておくということもあります。

 訴状の作成 
 前記の内容証明郵便による契約解除通知を送付した後は,不動産の明渡請求訴訟を提起する準備をしていくことになります。

裁判所に訴訟を提起するためには,訴状と呼ばれる書面を作成しておかなければなりません。

 不動産明渡請求訴訟の提起 
 訴状が完成した場合には,その訴状を提出して不動産明渡請求請求の訴えを提起します。不動産明渡請求訴訟の場合には,その不動産の所在地を管轄する裁判所に訴えを提起することになります。

 不動産明渡請求訴訟の遂行 
 不動産明渡請求訴訟においては,各当事者が,それぞれ主張およびその主張を裏付ける証拠を提出して立証をしていきます。

不動産明渡請求の場合であれば,賃貸借契約の内容を記載し,両当事者の署名・押印のある契約書を提出することになります。なお,支払いがないことの立証は賃貸人側でする必要はなく,賃借人側で支払いをしたことを立証する必要があります。

 明渡しを求める場合には,すでに契約を解除していることを明らかにするために,契約解除通知も証拠として提出します。

また,契約の解除が有効であることを明らかにするために,信頼関係が破壊されたといえるような事実を主張し,それを裏付ける立証をする必要があります。また,すでに契約を解除していることを明らかにするために,

これは,通常の訴訟の場合でも,少額訴訟の場合でも同様です。事案によっては,当事者又は証人の尋問が行われるということもあり得ます。

なお,訴訟においても,随時話し合いが行われます。訴訟において話し合いがついた場合には,裁判所によって和解調書が作成されます。この和解調書には確定判決と同一の効力があるとされています。

 裁判所による判決 
 当事者の主張と立証が尽くされると,それに基づいて,裁判所が判決という終局的な判断をすることになります。

 不服申立ての手続 
 不動産明渡請求の判決に対しては,不服を申し立てることができます。

地方裁判所における第一審の判決に不服がある場合には,判決書送達の日の翌日から2週間以内であれば不服を申し立てることができます。不服申し立てをすると,高等裁判所が控訴審となり、さらに,その高等裁判所の判決にも不服があれば,最高裁判所に上告することになります。

 判決の確定 
 前記の不服申立期間に不服申立てまたは異議申立てをしなかった場合には,その判決は確定することになります。

 確定した判決は債務名義となり,それに基づいて強制執行をすることが可能となります。

 不動産明渡しの交渉 
 不動産明渡しの確定判決を得た後は,賃借人・占拠者に対して,不動産の明渡しを求めることになります。

 まずは,任意交渉・話し合いで不動産からの退去・立ち退きを求めるのが一般的でしょう。

 話し合いがついた場合には,いつ明け渡してもらえるのか,不動産内にある動産等をいつ撤去してもらえるのか,鍵などをどうやって引き渡してもらうのか,敷金と原状回復費用をどのように清算するのか,また,滞納賃料をどのように支払ってもらうのかなどについて,合意書(示談書)を作成しておくべきです。

そして,合意に従って,明渡しをしてもらうことになります。

 

 不動産明渡しの強制執行の申立て 
 話し合いによっても不動産を明け渡してもらえない場合には,裁判所の強制執行手続によって,強制的に立ち退いてもらうほかありません。

不動産明渡しの強制執行手続を行うためには,まず,当該不動産の所在地を管轄する地方裁判所に対して,不動産明渡しの強制執行を申し立てる必要があります。

 この不動産明渡しの強制執行申立ては,強制執行の申立書を提出して行います。

 この申立書には,手数料や郵券のほか,債務名義(確定した判決書)や執行文(判決をした裁判所から交付してもらう強制執行が可能であることを証明する書面)を添付する必要があります。

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 執行官による不動産明渡しの催告 
 不動産明渡しの強制執行の申立てがなされると,裁判所の執行官から,不動産の占有者に対して,明渡しの催告がなされます。

通常は,1か月以内に立ち退くように催告がなされます。

 執行官による不動産明渡し強制執行の実行(断行) 
 前記執行官による不動産明渡しの催告期間を経過しても明渡しがなされない場合には,執行官によって,強制的に不動産の明渡しが実現されます。これを「断行」と呼ぶことがあります。

具体的には,執行官が連れてきた明渡し等を行う業者(執行補助者)が,不動産内部にある動産等の遺留品をすべて撤去して,強制的に明渡しをすることになります。

 撤去された遺留品は,執行補助業者が倉庫に預かることになります。

 不動産明渡し強制執行の完了 
 前記執行補助業者が撤去した遺留品は,指定の倉庫に一定期間保管されます。当該期間内に占有者等がこれを引き取りに来た場合には,保管費用と引き換えにその遺留品を返還することになります。

仮に,占有者等が遺留品を引き取りに来なかった場合には,一定期間経過後,その遺留品はすべて廃棄されることになります。

 不動産明渡し執行費用の支払い 
 遺留品の廃棄等が行われると,強制執行の費用が確定しますので,これを裁判所に支払うことになります。

強制執行に使った実費は,執行補助業者への費用や廃棄費用も含めて,強制執行の申立人において支払わなければなりません。

 賃料等の回収 
 不動産明渡しが完了したからといって,滞納している家賃・地代などの賃料を回収できなくなるわけではありません。

賃料等の支払が無い場合には,その賃料を回収するために強制執行をすることになります。

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