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​■ 人事労務・労働事件 

1 労働問題が発生してしまった場合 
 労働者の要求、行動は法律的に正当なものかどうか、使用者は、それに対してどのように対応すべきなのかを、法律や判例に照らして検討します。その上で、方針を決定します。会社の実情や労働者の事情を踏まえた現実的な対策を取る必要性もあります。例えば、解雇した社員が、地域労働組合に加入し、解雇は無効だと団体交渉を申し入れてきた場合、解雇が法律上有効とされるための合理的な理由があるか否か事情を検討します。その結果いかんで、会社の方針は大きく異なることになりますが、たとえ解雇は法律上難しい場合でも、会社の実情と労働者の事情を踏まえ合意による退職を模索すべき場合もあります。また、労働審判や裁判が起こされた場合は、法律的な検討を踏まえて、会社として正当な権利は主張しつつ、同時に会社経営に与える影響を極力少なくするために、迅速な解決を目指します。

 

2 問題の発生を未然に防ぐために  
 労使紛争は、未然に予防することこそベストです。というのも他の労働者に与える影響も大きく、場合によっては企業経営に重大な影響を及ぼすこともあるからです。例えば、法律上無効とされる解雇をしてしまったあとで紛争になると、それを解決するためには多大な労力とコストを要するため、事前に解雇の方針が妥当なのかどうかご相談ください。また、未払い残業代の問題が今後発生することのないように、賃金制度の改革も考えるべきでしょう。その場合、会社の実情と労働者の事情も考慮した現実的で妥当な制度改革を目指す必要があります。

3 労働審判への対応 
 労働審判とは,労働審判官(裁判官)1名と、労働関係の知識及び経験を有する民間人から選任される労働審判員2名(労働者側、使用者側で1名ずつ)の計3名で組織された労働審判員会が、個別労働紛争を、3回以内の期日で審理し、適宜調停(話合いによる和解)を試み、調停がまとまらなければ、事案の実情に応じた柔軟な解決を図るための判断(労働審判)を行うという、平成18年4月1日からスタートした比較的新しい紛争解決制度です(審判の内容に異議がある当事者は、異議の申立を行うことで、通常の訴訟に移行します。)。なお、係属した事件の約8割が調停により解決しているとされております。 労働審判の特徴としては、①原則3回以内の期日で審理を終結させる迅速性があること(審理終了までの期間は全国平均で2ヶ月半程度という統計データがあります。)、②当事者本人や重要な関係者に対して、裁判官、審判員から直接口頭で意見や事実認識を聴取(審尋)する手続が取られていること等があげられます。
 

4 使用者側から見た労働審判のメリット 
 労働審判を受けて立つ使用者側にとって,第1回の労働審判期日の時点で主張・立証が十分に行われる必要があることから,期日呼出状が届いた時点で、迅速に弁護士に相談・依頼するなど,事実関係を整理し,審尋に対する万全の準備をした上で期日に臨まなければなりません。このように,労働審判では通常の訴訟に比べて短期集中的に準備を行うことが必要になりますが、使用者側にとっても、短期間で迅速に労働紛争の解決を目指すことができるというメリットがあります。労働者側が、労働審判制度を選択する最大の理由も、本音のところは、調停による迅速な問題解決を目指そうとする点にあることが大半と思われます。
 また、労働審判は、労働審判委員会から、調停あるいは審判のために必要となる事実について、当事者や関係者に対して直接質疑がなされるため、当該紛争に関する事情を良く把握している担当者(申立人の直属の上司等)が出席し、直接口頭で事情を説明できる点に大きなメリットがあります。これにより、労働者側が説明する事実に対して、使用者側も労働者の実態を一番理解している関係者を期日に出席させることにより、事実と異なる点について適宜かつ正確に反論していくことが可能となります。
 さらに、一般論として、労働事件は、適用される法律が労働者の保護に主眼があるため、使用者側の言い分がそのまま受け入れられるケースはそれ程多くはありません。しかしながら、労働審判は、基本的には調停による解決を目指す制度と言えるため、当事務所の経験上、労働審判委員会からは使用者側の言い分にも相当程度配慮した(使用者側としてもある程度納得がしやすい)調停案が示されることが多いです。
以上のように、労働審判は、使用者側にとってもメリットが多い制度であるといえます。

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